飯田晴第三句集『ゆめの変り目』(ふらんす堂)、集名に因む句は、
噴水にゆめの変り目ありにけり 晴
である。また、2010年から2018年春までの300句を収めたともあった。また、夫君の急逝には以下の句がある。
鳥居三郎急逝
秋風の野を脱ぎ捨てるやう逝けり
鳥居三郎とは、まだ鳥居三太と名乗っていた「童子」の時代に遡る。そんなに深い付き合いをしたわではないが、けっこう気が合っていたかもしれない。なかなかに男気のある人だった。愚生が前の会社を退職(偶然に定年退職日が、会社解散日だった)したのちに、文學の森「俳句界」で働き始めたころ、これも偶然に東京駅で出くわしたことがある。そのとき、すかさず月刊「俳句界」を「大井さんがいる間は定期購読する」と言って、早速、購読を申し込まれたことを思い出す。
ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
ひとへやにこぞりし手足はつむかし
水といふ水ひつぱつて氷けり
かぞへてはいけない曼珠沙華だらう
秋蝶をひかりの中に見失ふ
地下室の夏や展翅の蝶あをし
沼に来て冬のひぐれを促せり
木の雨に浮いて茸の肉白し
干潟夕づくいよいよ鳥のこゑ
鳴き龍をたんと鳴かせて春惜しむ
飯田晴(いいだ・はれ) 昭和29年、千葉県生まれ。
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