2018年9月9日日曜日

冬野虹「西の空くたくたすみれひきだせぬ」(「むしめがね」NO.4)・・・



四ッ谷龍氏↑


           鎌倉ミルクホール(鎌倉駅より徒歩3分)↑

 秋の良い天気になったので、思い切って冬野虹素描展〈於:ミルクホール鎌倉2Fギャラリー、9月8日(土)~9月17日(月)〉を訪ねた。久しぶりに四ツ谷龍にも会えた。冬野虹の素描の実物がじつに繊細な線で描かれているのに驚いた。案内にいただいたその葉書にも、その線の在り様は伺えるが、その実物の比ではない。四ツ谷龍は、印刷では、どうしてもその繊細さは出ないといっていた。
 四ツ谷龍と亡くなった冬野虹は二人誌とでもいうべき「むしめがね」を発行していた。その「むしめがね」に表紙やカットに使用された素描にも出会えた。四ッ谷龍曰く、整理しきれていないが500点近くはあるという。
 たまたま、手元に引き出した「むしめがね」4号(平成元年9月)の表紙に描かれた絵は、ミルクホールの一階の壁にかかっていた。そこで、愚生は昼食にカレーライスに紅茶を注文した(美味だった)。そのミルクホールは、かつて鈴木清順監督「ツィゴイネルワイゼン」の映画のロケが行われた店だということであった。
 その「むしめがね」NO、4の特集は「80年代作家の課題」と「映画・美術・音楽エッセイ」だったが、冬野虹は「橇にのって」と題して60句(平成1月~6月)を発表している。その中から、当時、愚生が印を付けていた句を以下に記しておこう。

  満月や地に粘りつくオートバイ            虹
  慈悲心鳥十一十一(じゅういちじゅういち)ポテトかな
  光州にもっとも遠く蟬きしみ
  ふきのたうたらんとむらさき袴干す
  死にいそぐ金色鯉よおまへとただよふ
  ゆふやみは鉛のやうにきっちり鳩
  伊勢の風橋の途中からどきどき
  ブロッコリー言葉の釦だいじやうぶ

 同号の四ッ谷龍の句(題は「緑のタオル」)も一句挙げたい。

  大時計の下ぐにゃぐにゃの汽車となる        龍

冬野虹(ふゆの・にじ) 1943年1月1日~2002年2月11日。大阪生まれ、享年59。


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