2018年9月28日金曜日
荒木かず枝「石となり遺る生物寒北斗」(『真埴』)・・
荒木かず枝第一句集『真埴』(邑書林)、序は小川軽舟、集名『真埴(まはに)』は、小川軽舟の命名による。それについて、
これは私の好きな次の句からとった。
鹿鳴くや埴に濁れる水たまり
ことさら想像力の飛躍を交えず。眼に見えるもの、耳に聞こえるものをそのまま詠んでいるが、それだけに荒木さんの心が大和の地に深く根を下ろしたことを感じさせる。このような句が増えれば増えるほど、荒木さんの作品世界は揺るぎないものになるに違いない。
埴とは粘土質の赤土である。真埴はその美称。
と記している。跋は、宮木登美江。それには、平成15年に「鷹新葉集」を受賞し、「湘子先生に、今年一番伸びた人と評された」としるされている。その中の句に、「月明のふくろふ骨を吐きにけり」の句があり、その句について、
月明のふくろふの句は、本当に見たのよとかず枝さんは強調する。夜行性で、梟なら、月夜に食った鼠の骨を吐くだろうと。
それはこの句を読んだ後に思うことで、とても思い及ばない場面だ。月明も、とても鮮やかだ。
と述べ、その句があったこともあリ、東大寺の森に飛翔するむささびを一緒に見に行くことになったという。顛末は本書をご覧あれ・・・。
ともあれ、いくつかの句を本集より挙げておこう。
走らねば消ゆる野焼きの炎かな かず枝
山焼や魑魅(すだま)おさへの塩を盛る
父よひまはりの種とりくれし父よ
途上忌の枯野に眼鏡拭ひけり
春暁の鳧鳴きわたる寝覚かな
水母浮く砂嘴の内なる海冥し
後朝やワイパーに霜払ひたる
甕棺に土中の時間冬の草
久延毘古(くえびこ)を抜き口笛のごとき風
白光の打掛の鶴冬座敷
荒木かず枝(あらき・かずえ)、1948年、京都市生まれ。
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