艸(くさかんむり)第0号(編集・発行 佐々木六戈)、表Ⅱに、「この世界は美しいものだし、人間のいのちは甘美なものだ。」と献辞がある。巻尾の跋によると、釈尊のものらしい。跋には、
〇艸を「くさかんむり」と訓むこととする。これまでの私たちの集いは一七年もの長きに渡って「草藏」を名乗っていたが、藏にはそもそも、「草の中に藏(かく)れた人の意があったようだ。私たちは隠れ果せただろうか。作品の背後に。あるいは堅く扉を閉じて。再び、私たちは「艸」へ結集する。艸は創に通じて「はじめ、はじめる」の意がある。起草の草でもある。書きはじめるのである。
と冒頭にあり、また、
〇艸会*瓶華評*員集として皆さんの句が並ぶ。私は選句を行わない。但し、毎号五、六句の短評をこれに付け加えることとする。
ともある。ともあれ、前誌「草藏」と同じく、佐々木六戈は俳句「この一年余」、短歌「草は生え、子どもたちは」、詩「冬のエンペドクレス」を発表している。ともあれ、詩を除いて、六戈句と「瓶華評」掲載の句のみを紹介しておこう。
在さねば見ゆ野の色山の色 六戈
群青も澄みなば暗し龍の玉
息白く後ろ明かりの鶴のこゑ
夢長く木の実を拾ふまでの径
ひもじさの狐の色も薄れたり
「草は生え、子どもたちは死なねばならぬ」スタンザの欠片のごとく雲浮かびをり
スタンザの欠片*ヴィクトル・ユゴー
黙読のわれは籾殻こぼしけり 葭澤美絵子
昏れてなほ万木の実の降り積もる 荒井八雪
北ばかり見てゐるうちに霜柱 かとうさき子
『漢字字解』を動かざる冬の蠅 藤原 明
藁塚の整列したる匂ひかな 山田やよひ
撮影・染々亭呆人 ↑
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