2020年1月3日金曜日

山田佳乃「幾度も労はり合うて初電話」(『残像』)・・・



 山田佳乃第3句集『残像』(本阿弥書店)、集名に因む句は、

  残像は光のしぶきつばめ魚      佳乃

 2017年から2019年半ばまでの307句を収める。「あとがき」に、

 五十代半ばになって思い出すことは、母、山田弘子の後ろ姿です。ずっと机に向かっていた母の気持ちがいまになって分かるようになりました。
 この頃母の書棚の様々な本を少しずつ読んでいますが、自分はこうして母のあとを追いかけていくのだと思います。

 とある。思えば、母・山田弘子の急逝(心不全)によって、

     山田弘子忌日
  紅梅の薫り九年といふ月日

 思わぬかたちで、「円虹」の主宰を継いだ山田佳乃は、奇しくも、その年の第21回日本伝統俳句協会賞を受賞した。もう9年もたったのだ。清水哲男は『増殖する俳句歳時記』に山田弘子の句をけっこう多く取り上げているが、

  過ぎ去つてみれば月日のあたたかし   弘子

がある。ともあれ、本集より、いくつかの句を以下に挙げておこう。

  初雀大地の色を賜りぬ
  椿餅自服に雨の昏さかな
  いつしかに水は眼を得て白魚に
  痂の下はももいろ水温む
  皆違ふ虚ろを見つめゐる雛
  京五条四条三条花吹雪
  蓑虫や風の殿風の先
  凍蝶を栞りて風の甃
  つと向きを変へたる野火を見逃さず
  木の芽吹く人の時間に木の時間
  金の蘂残して牡丹散華かな

 山田佳乃(やまだ・よしの) 1965年、大阪生まれ。


撮影・鈴木純一 ↑

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