2020年1月27日月曜日
山﨑十生「かいつぶりまづは明星仰ぎけり」(『銀幕』)・・
山﨑十生第11句集『銀幕』(東京四季出版)、巻末に付された「凡例(新時代対応 仮名遣い」とあるのは、句を書く際の山﨑十生の主張の根拠を示していて、良い。たぶん句集では、仮名遣いの表記は統一した方がいい、などと言われて、面倒なことが色々あるのだろう。自身には気まぐれではなく、こうして統一された表記法があるのだ、と宣明しているのだ。以下に厭わず引用しておこう。
・文語的発想の場合は、歴史的仮名遣いで表記。
・口語的発想の場合は、現代仮名遣いで表記。
・歴史的仮名遣いの場合、拗音、促音は、明治三十年発行の
『國語讀本 高等小学校用 巻六』を典拠として小文字で表記。
・ルビの表記は、現代仮名遣いで表記。
以上である。また「あとがき」には、
(前略)本書は、最近七年間「紫」に発表した作品から抄出したものです。毎月六十句以上の作品の中で、九割以上を席題が占めています。俳句手帳を持たない主義で、俳句を書くにあたりましては、小短冊と愛用の万年筆で認めています。それらの作品を「紫」に毎月発表するのは十七句で、それ以外の作品は全て捨てています。そういう拘りをもって編まれた句集なのです。俳句総合誌や新聞、同人誌に発表した作品は含まれておりません。また別の機会に纏めたいと思っています。
潔いといえば潔い。句集名『銀幕』について記されているが、山﨑十生の第一句集、19歳の第一句集が『上映中』だから、いずれ映画つながりの不思議さがあるが、その繋がりについては記されていない。ともあれ、愚生好みになるが、本集よりいくつかの句を挙げておきたい。
備蓄せし末期の水や春闌くる 十生
腕組みにあらぬ腕組む春の宵
脚本を無視して桜ふぶくのだ
宝刀を抜かねば虹は生まれない
指切りの指うっすらと汗を搔く
紺青の天逆柱昇る蟻
水垢離も色なき風の垢離もよし
じっと見てゐれば恋しき草の花
揺れていることも行往坐臥の萩
人恋はば寝(いね)積むほかはなかりけり
相聞ゆ星のきらめき憂国忌
振幅の大きな芒から枯れる
空っ風なども衣といたします
山﨑十生(やまざき・じゅっせい) 昭和22年、旧大宮市生まれ。
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