令和になってからの月日、私にとって大きな出来事が三つあった。一つはパソコンを買い替えたこと。(中略)
もう一つは長年の念願だった『夕月譜』の出版。昭和末期、藤原月彦さんとの二人誌「巫朱華」に掲載した共同作品だ。年齢的にも今をはずすと無理になるだろうし、昭和末期のものを令和元年に出すことに拘った。赤尾兜子先生の急逝で、俳句の上では孤児になった者同士、なにかをやっていたかったのだろう。こんな時代もあった、ということ。(中略)
表紙の葉はコリウス。シソ科の植物で、お盆にお嫁さんがもってきたのが花瓶のなかで根を出していた。鉢に植えると大きくなった。
と記されている。冊子の内容は、いつものことだが、俳句・短歌にエッセイ(蕪村句に関するものは、これは、そのうち一本にまとめられるだろう)。ともあれ、収載作よりいくつかを挙げておこう。
緑さす五体崩ゆるにまかせたり 夕美
たつぷりと空気いだけり籐寝椅子
仄見ゆる黄泉の辻かや葛嵐
冬うらゝ黄泉へいざなふ潦
生きるため夢をみてきたそれだけの人生だつたそれだけのこと
「ごめんね」と「ありがとう」とをくりかへし令和元年冬の一日
今生の終はりを見むと半眼のまま坐りゐる籐の揺り椅子
★閑話休題・・・池田澄子「先生忌寒くきっぱり空青く」(「祭演」58号)・・・
「祭演(Dioniysosの宴)」58号(主催・編集・発行、森須蘭)、「祭演」掲載作家のなかの「豈」同人(元同人含む)つながりで、池田澄子以下、一人一句を紹介しておこう。
雪螢あれはほんとは我が欠片 池田澄子
瞬きをふっと追い越す冬の蝶 森須 蘭
からすうりはたらかないでいきている 川崎果連
銀杏の実ぶつからないと気がすまない 杉本青三郎
白く小さく小さく白い鬱と秋 伊東裕起
長所だけ思いつかない枇杷の花 成宮 颯
池田澄子さんの句と成宮颯さんの句、素敵です!特に池田澄子さんの句、上記2句は良いなぁ。雪蛍の句なんかは泣けてきます。知らなかった句です。大井恒行さん有難う!
返信削除いつもいつも感謝です!武藤幹
お便り有難うございます。今年もよろしくお願いします。大井
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