「戛戛」第133号(詭激時代社)、巻頭の詩篇に、田井義信「あるきなさい」、続けて志都一人「寒の鮒ー三十五句抄」が配されている。「戛戛」第133号の「附録ー追懐 田井義信」の各務麗至の「田井義信詩集」プロフィールによると、
昭和二十四年二月十二日生。平成二十六年十一月十七日永眠。十歳の句に始まり、十七歳から、ペンネーム田井洋一で各務麗至と「二人」を共同編集。「詭激時代」創刊に参画。後、二十五歳の頃まで文芸同人誌「白翔」に創刊参加。(中略)後年の折々に俳句をひねっていた。因みに長男は「洋一」と命名。
永遠の時の間のさくらかな 遺作 (以下略)
とある。また「寒の鮒」の「覚書」の結びには、
滝井孝作の「俳人仲間」から俳句に志都は興味を抱き、無論「無限抱擁」も読んでいて、あるいは檀一雄の句にも接していた。私はその後文章上の勉強の一つでもある俳句の魅力にとらえられて、塚本邦雄から金子兜太にすすみ、三橋敏雄に行きつくのだったが、
追いつけ追い越せの志都がその頃既に此の世を去っていたなど、知るべくもなかったのである。
とあった。ともあれ、志都の一人の句と、「戛戛」133付録から、以下に、少しばかり紹介しておきたい。
ニ十八歳
妻が燃える煙のきわの山躑躅 一人
喀血の朝の閑さ寒雀
気は満ちて三界に巡るも
身は田野に伏して庭桜を看る
春秋三十歳復夢ならずや
人ごとに酌まんかな一杯の酒
春光の無限の空の果てはここ
手に弾けきびしかりけり寒の鮒
* * *
歩きなさい (田井義信)
歩きなさい
まっすぐに
果てない道を
一人で
己を知りなさい
ゆっくりと
道草をせず
歩くのです
夢を抱いて
夜のせつなさに
涙せず
ひたすらに
歩きなさい
追悼 各務麗至
夭逝は嘘と思ふうそ寒し
溢れるもの
溢れるまま空を見上げ
ーーさやうならはない友よ
また会はう
赫々と漢の空や秋のくれ
撮影・中西ひろ美「秋の日の釣瓶落しの向う岸」↑
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