伊藤伊那男第三句集『然々と』(北辰社)、集名の由来については著者「あとがき」に縷々記されているが、ブログタイトルに挙げた「鹿鳴くや恋はかくかくしかじかと」に因むのではなかろうか。
俳句は人生の変遷を映す鏡だなと思う。句集名『然々(しかじか)と』は「斯様(かよう)「斯(か)く斯(か)く」と同類で、その後私はこんな風に生きてきましたー、という意を籠めたつもりである。
とある。母恋、妻恋の句が目にとまる。
母に書く花の便りはひらがなで 伊那男
針箱は母の密室春隣
秋袷子が着て妻と見間違ふ
蒔いてみん妻の残しし花の種
風鈴を妻の吊しし位置に吊る
ともあれ、愚生好みのいくつかの句を以下に挙げておきたい。
冬夕焼この色誰か死にたるか
掛け替へてはや風癖の夏のれん
動かせば火鉢に爺がついてくる
鳴りづめの風鈴の舌すこし切る
楪や山国の日の遍満に
銃眼で見る横須賀の冬鷗
石たたき叩き回りて川暮れぬ
隠れん坊のやうに人逝く年の暮
伊藤伊那男(いとう・いなお)、1949年長野県駒ケ根市生まれ。
★閑話休題・・・
先日、都内に出たついでと言っては恐縮だが、愚生のブログに写真をいただいている葛城綾呂の写真のひとつがが「フォトパスグランプリ2018 1st ステージ写真展」7月20日~25日(於:オリンパスギャラリー 東京新宿)に入選して飾られているというので、立ち寄った(写真ではコードネームがあるらしい)。葛城綾呂(これもすべてペンネームだが)は愚生と同県生まれ、亡き大中祥生に、俳句の才をかわれていたらしい。かつて「未定」の創刊同人仲間でもあった。彼の写真(上段中央)の題は錦鯉①だったが、被写体は紅葉した葉である。愚生と同齢なれど、息災に病はいろいろ飼っているらしいが、愚生より様々な面で、はるかに明晰である。
撮影・葛城綾呂 アブラゼミの羽化↑
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