2018年6月24日日曜日

齋藤愼爾「夭逝のいな夭生の冬の蝶」(「夢座」第178号)・・



「夢座」第178号(俳句同人誌夢座東京事務局)、巻頭エッセイは齋藤愼爾【時への眼差し】XIV「常世と現世の間(あわい)にて」で、多くを石牟礼道子と小宮山遠に触れている。また、江里昭彦の連載【昭彦の直球・曲球・危険球】㊾「小宮山遠(とおし)いつか喪服を脱ぐ日」は、偶然にも齋藤愼爾と同じく、小宮山遠論である。この二人がいかに小宮山遠という俳人を大事に思っていたかがわかるものである。齋藤愼爾は巻頭エッセイに続けて「泣きなが原幻視行ー石牟礼道子さんを悼む」と題して20句を発表している。ブログタイトルに挙げた「夭逝」の句は、その20句中の一句である。

   不知火のひかり凪たる三千世界(みちおほち)    齋藤愼爾
   空蝉の骸に苦海の白怒濤
   文字摺草(もぢずり)の精去り泣きなが原真の闇

 などの句も中にある。
 他に「定例句会記録」(「夢座」第375回より)では、先般亡くなった金田冽への追悼献句が寄せられ、追悼文を銀畑二が書いている。その結びに、

   厨房の洌を思う花吹雪    江良純雄

 カレーショップの厨房ですから油は使えません。でも、金田がこの世で一番好きだった食べものは「鯵フライ」でした。テーブルに置かれた醤油やソースが固まりこびりついているような大衆の店でも鯵フライ。たぶん鯵フライなんかメニューにないであろう高級和食屋さんでも、まずは鯵フライを頼む御仁でした。

    鯵フライ残して逝きぬ花の冷え 鹿又英一

 新宿で鯵は釣れないけれど、新宿文化が大好きな男でした。

とあった。それにしても、さらに胸にせまったのは、先日亡くなった佐藤榮市が、その一月前の句会で、金田冽への追悼句「金さんのあの世へ続け花吹雪」を寄せていることだった。そのことを思うと、佐藤榮市はその時、まさかその直後にまさに「あの世に続く」とは思いもよらなかったのではないかと思えるのでした。 合掌。
 ともあれ、以下に一人一句を挙げておきたい。

   散る花のこの散る花にまじる蝶     佐藤榮市(遺稿)
   花吹雪地団駄踏んで生きてみる     照井三余
   点滴の瞳の虚ろなるメロン       江良純雄
   てんとむしトマトになって晴れる朝   森 英利
   五月闇巨大迷路のその先に       太田 薫
   足立区や家で花火の音も観ゆる     城名景琳
   ビザなしのカミツキガメにも夏来たる  銀 畑二
   三月の濃淡の無い水平線        渡邉樹音
     追悼 金田冽さんへ
   想い出の思い出横丁鯵フライ      鴨川らーら 



          撮影・葛城綾呂 ツルバラ↑
 

2 件のコメント:

  1. 大井さん、お久しぶりです。兜太さんのお別れ会で会われた西井さんの東京四季出版から、6月24日奥付で、第二詩集『若三日月は耳朶のほころび』を刊行しました。お送りしたいのですが、アドレスお教えいただけませんか。いつも同じようなこと申し上げて恐縮です。限定番号入りですので、020〜500からいくつかお好きな番号をお知らせ下さい。田中淑恵

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