2018年6月3日日曜日

田中惣一郎「吹きちぎる風こそ光れ風にこゑ」(「里」NO.183)より・・・



 「里」2018年6月号、通巻183号(里俳句会)の特集「芝不器男がなんだか身近になってきた」は、「里」同人の堀下翔(第5回芝不器男俳句新人賞対馬康子奨励賞受賞)、田中惣一郎(第5回芝不器男俳句新人賞特別賞受賞)の二人の受賞記念と合わせて、川嶋健佑の松野町芝不器男記念館に赴任することになったことの記念の特集らしい。主な内容は、芝不器男50句抄は中山奈々撰、佐藤文香は第二回芝不器男俳句新人賞対馬康子奨励賞受賞者ということでの特別作品15句「オーストラリアについて」、奨励賞受賞作品は全100句、各奨励賞の作、堀下翔論は対馬康子「古典的新しさ」、田中惣一郎論は関悦史「現在の陰画となる文体」。記念エッセイは川嶋健佑「直感ー芝不器男って何者?」と作品20句「庭を歩けば」。愛媛繋がりとやらで松山大學在学中の里同人・脇坂拓海作品15句「端っこの海」。以下に一人一句を挙げておこう。

   ラウンドアバウト菩提子へ枯れ得ぬ光    佐藤文香
    ラウンドアバウト 環状交差点
   白藤や揺れやみしかばうすみどり      芝不器男
   秋の蟬ちつとも死なぬ深空かな       堀下 翔
   落ちながら椿は吾や名を忘れ       田中惣一郎
   晴れときどき洗濯籠にゆきだるま      川嶋健佑
   ひかりなら薔薇を奥まで行きなさい     脇坂拓海 



★閑話休題・・・

「里」堀下翔の連載「俳句雑誌管見」も第50回「平成俳句を隘路にしないために」もって最終回だという。終り繋がりで、紹介するが、句歌詩帖「草藏」(草人舎)が第99号をもって終刊する。表2に毎号かかげられたていた「開扉の辞」、

  ねがわくは
  句と歌と詩の言葉が
  草ほどの光栄を纏うて
  われが書の藏に
  入らんことを  
          佐々木六戈

に対応する「閉扉の辞」はない。ただ「草の扃(くさのとざし)」には、

 百年(号)は生き難し。百から一を抹消して九十九歳(号)の祝賀とする。白寿である。白の象形は白骨化した頭蓋骨の形。野ざらしとなった髑髏である。白寿とは己が髑髏を言祝ぐことか。小野小町九相図を思い浮かべてもよい。

とあった。ただ終刊以後の活動もあるという。「艸(くさかんむり)」として復活(本年秋口を目指す)するらしい。ただし100冊を超えない(よって、送付する人数・機関も100以下)。句歌詩帖などという冠辞は用いないともあった。
以下「風人帖」より、

  (わかじに)も寿(いのちながし)も春の雲      佐々木六戈
  此処までは歩いて来たが此処からは石蹴りながら北斗七星   〃

     詩篇/エクリプス羽Ⅱ

  求愛を終えた冬の羽
  飛ぶことも稀だから いっそ きえてしまいたい

  (中略)

  水に入ろうとしているのだ
  私の金色の眼を目当てに



           
           撮影・葛城綾呂 ネギ坊主↑

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