2018年6月6日水曜日

佐藤榮市「散る花のこの散る花にまじる蝶」(「垂人」33号)・・




「垂人(たると)」33号(編集・発行人、中西ひろ美・広瀬ちえみ)に、先日5月23日に69歳で亡くなった佐藤榮市の俳句と詩が掲載されている。改めて哀悼の意を表したい。
記事中にもあった。例えば「二字の句会と川柳」(幹事・中西ひろ美)には、

 「二字の句会」とは、その日一回目の句会にでた句の二文字だけを変えて句を作るという趣向の句会だ。

「垂人」の句会では、色々な趣向を考え、実践しているらしいが、続けて、

一回目の句会の句を二字変える趣向というのは、たとえば、次のような元の句を二字変え、どのように変化させるかということである。

  敗北が石になり紅葉なぐさめる    
火星
  東北が石になり枯葉なぐさめる    研治

  あいつとは石のことなり冬ざるる   
かも
  あいつとは絹のことなり冬ざるる   純一

とあり、また、佐藤榮市はこの時、

 礼節と礼儀を鼻にかけている     ちえみ
 礼節と食気を鼻にかけている     榮市

という具合に作っている。詩篇は以下に抄出する。

 「それ」は           
                 佐藤榮市

 たとえば 「それ」は
 同じ音の ふとした
 からまりや もつれ

 ききとして
 きさらぎをゆく
 きさきの
 ききのきざしの
 ・・・汽車の
             (中略)

 僕のそばにいて
 センチメンタルで
 ピュアなまま
 妻と戯れる
 笑いであり
 シャボン玉の足を追って
 風とともに
 僕とともに
 いつのまにか
 消えてしまう
 アーイ! だ

いわば遺稿となるものである。
ともあれ、同誌同号より幾人かの句を以下に挙げておこう。

 玉の緒の
 蟷螂の斧
  金の斧             鈴木純一

 残菊の皮膚感覚を暮れてゆく    佐藤榮市
 新年の嗚呼ではじまる空があり  髙橋かづき
 恵方道ゆくやロヒンギャを忘るるな 川村研治
 極楽でおぎゃーといっているところ 渡辺信明
 初旅はSuicaで行けるところまで帰るところがあって青空  中西ひろ美
 投げ出してときどきたたむ膝頭   ますだかも
 戦争は人間がやれロボット組合   中内火星
 春の扉を暗証番号押して入る    大沢 然
 並木路もいずれ神代曙か古き根の樹に花降り急ぐ      野口 裕
 くねくねとしている春の縫い目なり 広瀬ちえみ  



 

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