2018年4月1日日曜日

浜岡紀子「人をまつあはひは花をまつあはひ」(『美しい夜』)・・



 浜岡紀子句集『美しい夜』(現代俳句協会)、序文は川村研治「いのちかがやく」。集名は以下の句に因む。

   美しい夜と子のいふ新年会    紀子

 著者「あとがき」には、

 (前略)大勢の人と喜びを分かち合うのは人生を豊かにしてくれると感じたからなのです。孫の紗妃の絵を表紙に、孫の諒の言葉をタイトルにすることに決めてたのはそんな心の表われです。もうひとりの孫は四年生の頃俳句を作っていました。〈おみこしのかざりの鳳凰あばれてる〉〈かいがらのあなの中からザブンザブン〉など。

 と記され、幸せな一家の様子がうかがわれる。そのゆえだろうか、率直な句作りである。それはまっすぐにものを見つめる眼差しということでもあろうか。
ともあれ、以下に集中よりいくつかの句を挙げておきたい。

  蛇穴を出づ身のうちに波うまれ
  黙契でありしを亀に鳴かれけり
  うすらひのみづへみづへと遡る
  殻の裏朱に燃えをらんかたつむり
  涼新た水が圧しゆく水の影
  耐へるだけ耐へたるものに浮人形
  冬薔薇散りし翳りのなかにゐる
  何でもない朝だつたはず原爆忌

 浜岡紀子(はまおか・のりこ)昭和13年、台湾生まれ。


          撮影・葛城綾呂 馬酔木↑

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