2019年4月17日水曜日

岡田美幸「電球が光り止まない傘の下眩しそうだね回転木馬」(『現代鳥獣戯画』)・・



 岡田美幸歌集『現代鳥獣戯画』(コールサック社)、タイトルに因む歌は、

  ぼくうさぎ さみしくないよカラフルな鳥獣戯画の中でダンスだ  美幸 

 であろう。歌誌「かばん」では、屋上エデンという別のペンネームで作品を発表しているという。短歌入門のきっかけについては、「あとがき」に、
 
 高校時代に福田淑子先生と出会い、その現代文の授業で短歌を知ったことがきっかけで短歌を詠むようになりました。福田先生と出会えたことと短歌に出会えたことが、私の人生で一番の幸運だと思います。

 とある。あるいは、現代短歌舟の会で依田仁美や原詩夏至から指導を受けているという。また、祖父は大工の職人だった、といい、

  職人は亡くなっても作品が残る。それは私にとっての希望でした。私も生きた証を残したい。

 とも述べている。冒頭の扉裏には「この本を作るにあたり伐採された木々らの冥福を祈る」という献辞もある。ともあれ、著者は若く、まだまだ未来がある。羨ましいかぎり、というべきか。集中より、いくつかの歌を以下にあげておこう。

  タートルはトータル何匹いるでしょう鶴亀算は足がいっぱい
  かたつむり歌えばきっとうたつむりト音記号の形のからだ
  水彩の光をたまに浴びながら海底散歩するナマコ姫
  季節って来たり過ぎたりしますよね捕らえて部屋で飼えませんかね
  使い捨てカメラが終わるまで撮って花火の真空パックをつくる
  空想とあらばすぐさま呼び出され遂に筋肉通のペガサス
  補助輪を外して土手を飛ばすとき全細胞はマッハのこども
  弁当の手羽先さえも飛びたがる青空のもとピクニックの日
  蛇花火 煙で夏を終わらせて思い出す度むせてしまうよ
  カチューシャはうさみみでって言ったのにメイドの少女がくれる熊耳
  空っぽのブリキの如雨露を傾けて水中花には無を与えよう
  山笑う さくらをすべて拾おうと花ぼらまみれになって踊った

 岡田美幸(おかだ・みゆき) 1991年、埼玉県生まれ。




★閑話休題・・遠藤若狭男「八月や海に敬礼して父よ」(「俳人『九条の会』通信」第21号より)・・


 「俳人『九条の会』通信」第21号(俳人「九条の会」事務局)、に昨年の「新緑の集い」の池田香代子「全体主義に抗するためにフランクル、ケストナー、アーレント」・遠藤若狭男「なんでもいいやい知らねえやい」の講演録が掲載されている。うち一人の遠藤若狭男は昨年12月16日に急逝した。改めて講演録を読むと、彼の持ち味のよく出た講演だったことが窺える。その講演の最後に女性俳人の句を引用しながら、彼には珍しく、はっきりした口調で、講演を終えているのが、やはり早逝の無念を改めて思わされた。

  囀や海の平を死者歩く     三橋鷹女 
  原爆手帳棺の母の懐へ     木田千女

  (前略)先生方の俳句とかいろいろな俳句から、戦争を知らない私ですけれども戦争は絶対反対、やってはいけない、アベ降ろせということを言いたいと思います。どうもありがとうございました。

と・・・。万雷の拍手が聴こえる。



2 件のコメント:

  1. 歌集の評を頂き、誠にありがとうございます。

    差し支えなければこのブログをツイッターで紹介させて頂いても宜しいでしょうか。

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    1. わざわざのお尋ね恐縮です。差し支えなければ、どうぞ!
      時節柄の御自愛祈念いたします。
      大井拝

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