2016年5月19日木曜日

浅沼璞「きよしこの夜の浴槽たたきける」(「俳句四季」6月号)・・・



                                           「俳句四季」6月号↑

「俳句四季」6月号・「今月の華」は浅沼璞。
思えば、「俳句空間」(1990年、NO.13)第一回評論賞は受賞作はなかったものの佳作で、事実上の第一回の名誉の高峰は浅沼璞「発句と付句ー芭蕉俳諧を中心にー」であった。選考委員は乾裕幸・富岡幸一郎・夏石番矢の各氏。編集部の選考経過の中では以下のように触れられている。

 富岡氏は「全体に論理展開がやや性急な印象を受けた」とされながらも「『俳句の不安定』はほかならぬ俳句そのものとしてもっと積極的に方法化しなおす必要がある』という指摘を『平句まがいの句』の氾濫との状況論の中で、より突っ込んで具体的に展開されると一層面白くなった」とされている。

あれからもう四半世紀以上が経ち、今、浅沼璞は俳人・レンキスト・批評家としての活躍が著しい
「俳句四季」本号の「最近の名句集を探る44」の座談会にも齋藤愼爾・筑紫磐井・大高翔とともに、藺草慶子『櫻翳』、吉村毬子『手毬唄』、五十嵐義知『七十二候』の三冊についてよく論じている。浅沼璞の師・真鍋呉夫を思わせる句として、「沢音の髪にこもりぬ螢狩」藺草慶子を挙げていた。また、蕪村的なスケールの大きい句として「白南風や富士はためける川の数」吉村毬子、また、スケールの大きさに注目したとして、「島国に六十余州水澄めり」五十嵐義和の句を挙げている。
浅沼璞、1957年東京都生まれ。「俳諧無心」代表。「群青」同人。

最後に、上記とは全く関係ないが、同号に「豈」同人でもある森須蘭が「昭和・平成の俳人 わが道を行く」で取り上げられているので、彼女の句を数句あげておこうか。

    夏草と同じ等高線上の被災地         蘭
    うつ伏せの夢に火事あり鬱のあり
    冬の蝶どちらから動いても恋
    稲妻が後ろに立っている介護
    一日中笑う練習猫じゃらし
    


                 
                  ヤマボウシ↑

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