2016年5月3日火曜日

山田航『桜前線開架宣言』(左右社)・・・



最新号の「歌壇」だったかを立ち読みしていたら、藤原龍一郎が短歌入門書のおすすめ本として『桜前線開架宣言』を紹介していたのと、「週刊 読書人」でのコラム「山田航の現代短歌虫めがね」をけっこう楽しみに読んでいるので、興味をそそられて図書館にリクエストして取り寄せてもらった。
その「まえがき」によると、歌人の皆さんからは「インターネットで短歌評を書いている正体不明の人物」扱いされていたらしい。本著は若い歌人たち、1970年代生れの歌人たち19名と1980年代生まれの歌人たち19名、そして1990年代生まれの歌人たち2名を収録し、見開きに各歌人の評が書かれ、各人56首が掲載されている。いわば、現代短歌の若き歌人たちの最前線を眺望できるようになっている。門外漢の愚生には、当然ながら知っている歌人の方が圧倒的に少ない。
加えて、五編のコラムとブックガイドを参照すると、短歌入門書としてもすぐれている、と思う。
例えばコラム「現代の歌人はどんな短歌に影響を受けてきたの?では、冒頭、こう書かれている。

 現代短歌のシーンで最大の影響を与えているのは間違いなく穂村弘(一九六二~)だ。一九九〇年に『シンジケート』でデビューし、「ニューウェーブ短歌」の旗手として活躍した。二〇〇一年にエッセイ集『世界音痴』を刊行してからはエッセイストとしても人気を博し。「文藝」でも特集を組まれるなど文壇全般で名前が浸透する稀有な歌人となった。穂村弘のエッセイがきっかけで短歌を知ったという者が少なくない。明確な評価軸を持った明晰な批評家でもあり、若手歌人たちの評価にも多大な影響を及ぼしている。

やはり、そうかと思う。時代は変遷しているのだ。愚生らの時代は、門外漢であった僕らにも(若い時代、愚生らはそう書いた)あきらかに短歌の来たるべき新しい世界は塚本邦雄であり、岡井隆,
以後であった。
俳句に於いても『新鮮21』世代以後が評価される時代だもの・・・。
楽しみといえば楽しみである。

  一斉に都庁のガラス砕け散れ、つまりその、あれだ、天使の羽根が舞ふイメージで
                                                     黒瀬珂瀾
  ゼブラゾーンはさみて人は並べられ神がはじめる黄昏のチェス           三森裕樹
  コーヒーを初めて見たるばばさまが毒じゃ毒じゃと暴るる話             石川美南
  どうしても君に会いたい昼下がりしゃがんでわれの影ぶっ叩く            花山周子
  封筒のただ一枚を棺として還ってきたという兄たちよ                  山崎聡子
  いつからか雲を数える癖がつき鰯雲ならぜんぶでひとつ               小島なお
  エレベーターあなたがあなたであることの光を帯びて吸い上げられる       服部真里子

山田航(やまだ・わたる)1983年生まれ、札幌に育ち札幌に住む。



  
  

0 件のコメント:

コメントを投稿