2016年5月22日日曜日

宮入聖「木犀の金の兵隊銀の寡婦」(〔宮入聖という俳句〕21〕・・・




掲句は、山内将史の個人通信「〔宮入聖という俳句〕/2016年4月22日/投函日ト異ナル」より。
宮入聖はその復活を期待されている今では伝説の俳人となってしまった。たしか攝津幸彦と同年生まれではなかったろうか。まさに彗星のように駆け抜けて行ったという風情である。冬青社という版元をみずからで起こし、「季刊俳句」を編集・発行したばかりでなく、若くして自らの多数の句集、評論集、小説集などを上梓した。父は人間国宝の刀鍛冶・宮入行平。
本通信に山内将史は以下のように書く。

  ものかげの永き授乳や日本海     澤 好摩
  滴りや性慾巌のごときもの       宮入 聖
  致死量の月光兄の蒼全裸(はだか) 藤原月彦 

私の関心から言えば、宮入聖と藤原月彦に代表される昭和二十年代生まれの俳人達だけで、俳句は始まり、俳句は終わっている。昭和十九年生れの澤好摩も加えよう。彼らは俳句の撤退戦をしたと思う。そのあとにまだ俳句は残っているかもしれないが、俳人は残っていない。

以下は、宮入聖第一句集『聖母帖』より、

   噴水とまりあらがねの鶴歩み出す      聖
   滴りや性慾巌のごときもの
   蜀葵母があの世へ懸けしもの
   瀧壺を見てゐる人の重心や
   鉄瓶の蓋ななめなる夜の秋







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