2016年5月20日金曜日

川野里子「ここであそこで鳴る鐘おほいなる楽器となりてこの町しづか」(「エフーディ)VOL2)・・



「エフーディ」は短歌と俳句の秘密結社だそうである。月に一度、都内で歌会と句会を交互に行う歌人・俳人・詩人・小説家のグループなんだとか。秘密結社とあるから、ここで紹介するのは、ちと、憚られるが(秘密じゃなくなる)、大分県竹田市・公報の「エフーディ」紹介記事にそうあったので、とりあえずそういう風に記しておこう。
今号は、その竹田の〈隠しキリシタン〉吟行の特集である。つまり、竹田はキリシタンの里でそこでのトークの仕事や市内を見学しての、それぞれのジャンルを横断して創作された作品でページが埋められている。興味深いものばかりだが、詩編、エッセイなどは割愛させていただいて、各一人一句・一首を以下に紹介したい。
 
  寒林の空や飛ぶものかがやかす                高柳克弘
  男根の隠喩としては古びたる茸赤しよ朝の林に

  清掃の名目で飛び込む 霧へ                  石川美南
  高熱の夢に踏む花踏む楽譜(絵踏みは季語と誰かに聞いた)

  十字架を南無阿弥陀仏にも刻む                東 直子
  小さき栗手の中に入れ歩きだす春には燃える草ふみながら  

  虫の音と革命のないカードゲーム               平岡直子
     
      「火あぶり、縛り首、磔・・・・ここでたいていの処刑はしました」と鏡処刑場で市役所の人         
      は告げた。
     夕刊のトップニュースかもしれない。
  あるだけの鉄道模型敷きつめて踏み絵といえばバージンロード

  草踏めば超新星爆発飛蝗(バッタ)散る           三浦しをん
  薔薇のない地でも血潮は流れけりせめて手向けよ赤きカメリア

  処刑場跡地を巡る冬の水                   平田俊子
  
  蓮根町どのトンネルも風かよひここに育ちぬ燕のように 川野里子
  頭のうえを千年前の雲飛べり肥後の赤牛豊後の黒牛  小島なお

川野里子は歌人にして、大分県竹田市生まれ。歌誌「かりん」編集委員。



      

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