「香天」第50号(香天の会)は創刊10周年号だが、特別に、どうということはなく、通常号の延長のようで、その地味さがいい。とはいうものの招待作品36句は鈴木六林男師事以来、同行してきた久保純夫に加えて櫻井ゆか。近年の久保純夫の多作ぶりを負けじと真似をしているような岡田耕治は掲載句のすべてを勘定にいれると200句近いのではなかろうか(まじめに数えなかったが・・・)。
当時の作句集団「獣園」↑
それよりも、思い出したことがある。愚生が最初に所属した同人誌「獣園」第7号(1972年3月20日刊・写真上)に、「岡田こうじ」の名で、和泉高(三年)10句「土間のある風景」が掲載されていたこと。その句の一部は以下、
豌豆を剥く子らの膝傷多き
手をひらき子の負はれ行く彩日傘
すぐに砂っぽくなる遅日の防波堤
いっしんに餅打つ腕のかはきをり
いっきにたぐる打網黒きまま夜明け
など、すでに高校生ばなれした句作りであることに驚いた。その頃、久保純夫の俳号は「純を」だった。愚生は、京都から東京に出て高柳重信に初めて会ったころだろう。高柳重信に「大井君は、なにが悲しくて俳句なぞやっているのか」と言われたこともあった。半世紀近く前のことだ。
さすがに本号の久保純夫の句はタイトルにしてから、情のあつい句、
香しき天地(あめつち)とあり鳥総松 純夫
で、かつ、
「香天」10周年を迎えた岡田耕治さんへ二句
王宮のかたちとなりぬ橙よ
鮫人が浮かんできたよ儒艮また
という具合に「おかだこうじ」の名を詠み込んでの佳句である。
もう一人の特別作品から、
地中へと続く階段鳥渡る 櫻井ゆか
以下は、岡田耕治代表作品・「附属池田小学校」より、いくつかの句、
秋桜互いの影を映したる
愛の羽根大きく胸を開きたる
目の玉を濡らしてよりの銀杏黄葉
雪うさぎ途中でやめることになる
福島県只見町
色変へぬ松百年に触れており
ともあれ、「香天」創刊10周年、まことにおめでとうございます。
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