2018年2月9日金曜日
駒木根淳子「望月の天の穴めく死者生者」(「麟」第62号)・・・
「麟」第62号(麟俳句会)の特集のひとつは、駒木根淳子句集『夜の森』。世評の高かった句集だから、評者もそれぞれにいいところを突いている。ブログタイトルにした中七「天の穴めく」句には、わずかながら、石牟礼道子「祈るべき天と思えど天の病む」の翳が窺える。ただ、今号の本誌で、愚生がより惹かれたのは【俳句貯金箱】飯野きよ子「野澤節子の『春あけぼの』」である。それは、「蘇生」という前書きのある野澤節子「あけぼのの春あけぼのの水の音」の句をめぐる渡良瀬吟行に思いをはせ、結びを次のように述べていて、気分をしんとさせる。
節子は枯れきった芦にも同化し、原初的な自然との関わり合いの中に生き、また生かされていた。節子の〈春曙〉の句は〈水〉の持つ激しさや優しさを、静かに聞かす琴の音のようにも思えた。
〈春曙〉の句とは、
春曙夢中の滝を見つづけて 節子
である。他には連載の野口明子「おいしいスケッチ」、今回は「寒天造る」であるが、こうしたエッセイにも「麟」は、清しい志を留めているように思える。
ともあれ、以下に本号より、一人一句を以下に挙げておきたい。
しぐるると眺めしのちに濡れゆけり 山下知津子
玄関は出て立つところ石蕗の花 飯野きよ子
綿虫の影を持たざるまま暮るる 駒木根淳子
戦へとあやふき地球冬の虹 野口明子
王義之の書や山蟻に淡き影 染谷佳之子
撮影・葛城綾呂↑
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