2018年2月23日金曜日

津沢マサ子「ひとの世の夢をみている夕焼野」(「俳句界」3月号)・・・



「俳句界」3月号(文學の森)の誌面には、興味深い特集、インタビュー記事が今月も掲載されている。「第19回山本健吉評論賞全文掲載」、「瀬戸内寂聴インタビュー」、「賑やかな高齢者俳句」など。ブログタイトルにした津沢マサ子の句は、90歳以後の自選5句からのものである。ご健在の様子で何よりだ。愚生が津沢マサ子に最初にお会いしたのは、代々木上原で行われていた「俳句評論」の句会だった。その帰路の電車のなかでサバサバした調子で、「俳句評論調に染まっちゃダメよ!」と言われたのが印象に残っている。愚生が22歳の頃だから、随分と昔のことだ。今考えると、津沢マサ子もまだ40歳を過ぎたあたりだったのだ。その後、山口剛が2年ほど前に亡くなるまでの数年間は、現代俳句協会の総会などで盛岡から上京してくると、必ずと言ってよいほど津沢邸に一緒に伺った。高柳重信の弟子にして無所属、孤高の女性俳人である。愚生が文學の森「俳句界」に世話になったときには、三橋鷹女の生前を知っている俳人として、彼女にインタビューをさせてもらった。とりあえず特集「賑やかな高齢者俳句」の一人一句を以下に挙げておこう。

   白寿まで来て未だ鳴く亀に会はず     後藤比奈夫
   初会 再会 偶会 白髪や 老眼鏡    伊丹三樹彦
   天心となりたる月に川の音        深見けん二
   ときどき老人ときどき子供土筆摘む     花谷和子
   街道にそれぞれよき名菜の花忌      有山八洲彦
   春ならひけふも眼鏡の行方かな       大坪景章
   ゆめの世の夢を捜して立つ枯れ木     津沢マサ子

 もう一つ、今号はおどろくことがあった。佐高信の「甘口でコンニチハ!」の田鎖麻衣子(弁護士)との対談「塀の中にいるのは、同じ人間」で、俳句の話題に及んだときに、大道寺将司や中川智正などの死刑確定者たちの俳句にふれたのちに、

田鎖 (前略)労働争議がらみで未決拘留されていた活動家の佐々木通武さんは、俳句を詠んでいたんですけれど、自費出版で本を出していました。タイトルが『監獄録句(ロック)』という。
佐高 センスいいタイトルだね。

の部分があって、数日前に、その佐々木通武から、先般、上梓した『影絵の町ー大船少年記』(北冬書房)の書評が神奈川新聞(2月18日)に載ったと、コピーをわざわざ送ってくれていたのだ。佐々木通武は他にも、自らの労働争議(一人争議)を記録した『「要求するとはなにごとだ!」世界でいちばんちいさな争議ー柴田法律事務所労使三五年の顛末』(東京・中部地域労働者組合柴法争闘記録編集委員会・2012年8月刊)をまとめている。
 思わぬところで俳縁は繋がっている、と思った。


            撮影・葛城綾呂↑








  

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