「山河」350号(山河俳句会)は、創刊が1949年2月で初代代表は小倉綠村、その後、加藤あきと、松井国央と続き、一昨年、「豈」同人の山本敏倖に継承されたが、歴史のある俳誌である。40ページほどのさほど厚くない雑誌だが、様々な試みを継続して毎月行っている。その一つに「チャレンジ俳句」という、季題と言葉の課題の2つの縛りを入れて作句するコーナーがある。同誌のモットーに「常に、新・真・深へのチャレンジ精神を忘れず、一人一人の個性を尊重」とあった。その志やよし。
愚生に、その選句と講評を数回依頼されたので、その一部を紹介しようと思う。因みに今回の課題は「白紙」で「季は新年」。
【天】 地球儀を白紙で包み「春」と書く 二村 吉光
地球儀をまるごと白紙で包んで、おまけに「春」と書くなんぞは、皮肉が効いています。ガマンだ待ってろ、嵐が過ぎりゃ、帰る日も来る、春が来るってわけです。とはいえ、新年にかける願いにもチョッピリ切なさがありますねぇ。
【地】 元旦や白紙に天地うらおもて 山県 總子
天地どころか、白紙にもウラとオモテまであるってわけですから、めでたい元旦に、気の利いたしゃれで、諧謔精神おおありです。
【人】 新春の抱負は白紙雲流る 山老 成子
正直な方ですね。空を見上げりゃ雲も流れ、でも、ちょっと待ってくださいよ。抱負が白紙なのは、まだまだ何でもそこに描けるってことですから、ひょっとしたら、これから抱負を豊富に抱こうとしていらっしゃる姿が目に浮かびます。
(以下は講評を略します)
【秀】 一年を白紙につつみ札納 難波 俊子
臨の手で白紙に返す初昔 山本 敏倖
福餅のよこに白紙の寿 稲田 ゆり
なにもかも白紙に戻し年新 榎並 恵那
独楽まわる白紙の先へ ゆっくりと 高梨よし子
新年の白紙うるわし野良犬も 石鎚 優
去年今年来世は未だ白紙です 小林 和子
白紙切り戌の一家に初高座 近藤 喜陽
一年の計まだ白紙寝正月 竹腰 素
三日はや机上の白紙うごかずに 中谷 耕子
【佳】 来し方を白紙にしたし卒寿明く 佐川 けい
人日の「おぎゃあ」と白紙委任状 新江 堯子
白紙からスタートします今日の春 押見 淑子
初明り机上に白紙委任状 後藤 宣代
去年今年予測予定は白紙です 渡辺 芳子
撮影・葛城綾呂↑
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