2018年2月13日火曜日

山田佳乃「神々の高さに鷹の光りをり」(『波の音』)・・・



山田佳乃第二句集『波の音』(ふらんす堂)、集名は次の句に因むものだろう。

   波音が好きで遺愛の冬帽子     佳乃

著者「あとがき」には、

 私は二〇一二年夏に大きな手術をいたしました。術後左耳の聴力、三半規管を失い、後遺症が残ることとなりました。そんな状態でも、俳句だけは不自由なくでき、積極的にでかけて参りました。満身創痍の状態でしたけれども、今では一見何事もなかったようです。 

とあり、この「あとがき」を読むまではまったく気が付かなかったのだが、集中に音の句、もしくは音に類する句がいくつかあるのに気を留め、読みすすめていた。例えば、

  炮烙の音のぞきこむ壬生狂言
  秋の日の沈む風音たてながら
  古時計巻き戻す夜の虎落笛
  玉砂利を踏む底冷の底の音
  波音が好きで遺愛の冬帽子
  錫杖の春の光りの音となる
  雨音のやめば鳥声春障子
  兄さんの草笛に音重ねけり
  とんとんと風踏み郡上踊かな
  遠吠えに返すものなし春星忌

 ことさら結び付けようとは思わないが、左耳の聴力を失う、とあったので、改めて少し思いを馳せたのである。母上の山田弘子には生前一度だけお会いしたことがある。まさに急逝だったので、娘の山田佳乃には、俳句をやっていたとはいえ、覚悟無き主宰継承となったのではないかと推測、それなりの苦労があっただろうと思う。
 ともあれ、集中よりいくつかの句を以下に挙げておこう。
 
  下宿屋の煙草の跡も畳替
  触れ合へばすぐに壊れてしやぼん玉
  赤子みな救世主めくクリスマス
  春風や首で争ふフラミンゴ
  茶の花の包みきれざる黄を零す
     金丸座
  花道を朧にしたる紙吹雪
  睡蓮や手窪のやうに日を受けて
  咲き残るものに縋りて冬の蝶

山田佳乃(やまだ・よしの)、昭和40年大阪生まれ。



  

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