2020年11月28日土曜日

北野抜け芝「すゝきからすこし出てゐてからだかな」(「オルガン」23号より)・・


 「オルガン」23号(編集 宮本佳世乃・発行 鴇田智哉)。恒例の座談会は「テン年代の俳句をめぐって」、メンバーは青木亮人とオルガン同人諸氏。平成以後の俳句表現の傾向を論じて、興味深い視座が様々語られている。それを領導するかたちで、


青木 たとえば、俳句史的に現在の状況を捉える際、個々に句についての善し悪しと異なる枠組みで作品を捉え直し、時代認識や俳句史観とともに語る必要があるように感じます。


 と、始まって、「オルガン」メンバーの実作も踏まえながら、最近の俳句状況を描き出してくれているので、愚生には、ああ、そういうことかと、結構説得力があった。読者諸兄姉におかれては直接あたられたい。ここでは、「オルガン・連句興行 巻拾壱」の初折を以下に紹介しておこう。まずはその留書から・・・。


 今年七月二十七日、北野抜け芝こと北野太一さんが、素粒社という出版社を設立されました。北野さんといえばこれなで、浅沼璞『俳句・連句REMIX』、福田若之『自生地』、小津夜景『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』などを編集、これらの本を手にとられた方はその、新鮮でユニークなありように、思いあたるところがあるかと。(中略)

 「オルガン」一同、素粒社の設立をよろこび、連句を巻くことにいたしました。


   オン座六句「すゝきから」の巻

                若之・捌/抜け芝・指合見

すゝきすこし出てゐてからだかな      北野抜け芝

 雲払はれし素顔たる月          福田若之

大皿にうつるラベルのなめらかに      宮本佳世乃 

 テープ起しの声のさゝめく        鴇田智哉

空気より冷たい鳥の樹を祝ふ        田島健一

 水銀灯がすごい元気だ            抜け芝

                               (以下略)

             ニ〇ニ〇九月ニ七日・首

                 十月ニ七日・尾

         於 立川ジョセイセンターアイム


ともあれ、本号より、以下に一人一句を挙げておこう。


  赤をほどけば秋のかたちはなくなる    福田若之

  高きに登る水上バスの上が空      宮本佳世乃

  いま見えていない稲光と行くな      田島健一

  コスモスのらせんが右へ逸れていく    鴇田智哉 



       撮影・芽夢野うのき「けさ冬の冬花つまな母の色」↑

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