2020年11月14日土曜日

鳥井保和「瞬きのごとき一生星飛べり」(「星雲」第57号より)・・・


  「星雲」第57号(2020.11.1発行・「星雲」発行所)、先日、恵送されたばかりだったが、あろうことか、帰宅のポストに「『星雲』終刊及び終刊号発刊のお知らせ」が届いていた。それには、


  (前略)突然のことでしたが、「星雲」主宰鳥井保和は持病の肺気腫(慢性閉塞性肺疾患COPD)の急変により、令和2年11月3日に帰らぬ人となりました。享年68歳でした。(中略)主宰の遺言に、「星雲」は一師一代。終刊を願うが、もし誰かが「星雲」の俳句精神を受け継いでくれるなら、誌名をかえて創刊するのはやぶさかでないとありましたので、ここにひとまず「星雲」の終刊を宣言し、終刊号を発刊したいと思います。(中略)

 本部句会、和歌山句会は継続することとし、後継誌につきましては「星雲」会員の皆様方に相談させていただいた上で検討したいと思いますが、できれば主宰を設けずに代表製として運営し、お互い切磋琢磨するような形を考えています。(以下略)

    令和2年11月10日   

            「星雲」編集長 小川望光子(ぼうこうし)(小川隆敏)


 としたためられていた。今号も表紙裏に「季節の一句」で、


   秋高し神に納むる稚児の舞      鳥井保和


 を執筆している花尻万博について、鳥井保和と一度でけ、立ち話をしたことがある。それは、花尻万博が第二回攝津幸彦記念賞を受賞する以前のことだが、まだ若い(今でも愚生よりはるかに若いが)、一途だが、少し変わったところのある彼のことを、気にかけておられたことを思い出す。もちろん、第二回攝津幸彦記念賞授賞に際して、はるばる和歌山から駆けつけてきた花尻万博が好青年であったことは言うまでもない。鳥井保和は、山口誓子最晩年の弟子である。ひたすら、誓子のを追っていた。それが「誓子の句碑巡り」、今号で57回目「蜜柑山南へ袖を両開き 誓子」(海南市下津町・福勝寺)であった。それによると「和歌山県下に誓子の句碑(全国に二〇一基の内」一四基ある」。 

 ともあれ、本誌本号から、花尻万博と最後の選句とおもわれる鳥井保和選「天星燦燦」の句を以下に挙げておきたい。


   灯籠の慰み難し廻り継ぎ        花尻万博

   城山の月を川面に鵜飼舟        森本潤子

   善面も悪面もよし酔芙蓉       中川めぐみ

   羽抜鳥己が羽根敷き卵産む       天倉 都

   油虫起死回生の飛翔かな        岡本 敬

   打水やお城通りの煎餅屋       新井たか志

   何枚も連ね満目大青田         古谷とく

   花茣蓙に細りし母のうたた寝す     田島和子

   行々子土手より低く暮しの灯      服部久美

   苔青し一石石塔奥之院         中嶋利夫

   夏潮の青きを讃へ熊野灘       小川望光子

   就中高野九度山富有柿         木下恵三 


  鳥井保和のご冥福をはるかに祈ります。合掌。 



         芽夢野うのき「さくらもみじ馥郁と天に散る」↑

1 件のコメント: