2021年5月9日日曜日

阿部鬼九男「『人も馬もそれっ切りだぞ』蚕祭文」(『黄山房日乗』五月九日)・・・

 


                 1986年5月9日↑


九日、健在と聞きし渡邊啓助に三十余年ぶり対面。「鴉展」オープニングパーティ(高輪)鯉沼廣行、横笛にて饗応。

主題に変ずることの出来ぬ怪(け)のやさしさにあまり立ち入らぬこと。ヴィジョンの強さを失ふ。


     「人も馬もそれっ切りだぞ」蚕祭文    阿部鬼九男


*『黄山房日乗』へ35年後の剽窃譚・・・


       5月9日(日)・・・晴


 渡辺啓助(1991・1・10~2002・1・9)は、推理小説家。鬼九男は群馬県渋川に育っている。渡辺啓助は一時群馬県立渋川高校の英語教師をしているし、家族の疎開先でもあって、戦後、昭和20年代を渋川で過ごしている。地元での面識があったのだろう。それが「三十余年ぶりの対面」と思われる。この頃、渡辺啓助は『鴉ー誰でも一度は鴉だった』(山手書房)を刊行。その「あとがき」に、「(前略)とにかく、私の『鴉』は学術書のたぐいではなく、ミステリー作家の『誠実なアソビ』のエッセイと考えていただきたい。(中略)そして、私自身が気のむくままに自筆の鴉の絵をいたるところに挿入させてもらったことも鴉と意気相通ずることの楽しさをほのめかしたものと思っていただきたい」と述べられている。また、愚生の地元、大國魂神社の御使いの鴉の団扇、暗闇(くらやみ)祭に「ミステリアスでファンタスティックで土俗的な情感が湛えられていて」と、出てくる。

 (高輪)はたぶん高輪プリンスホテルであろう。鯉沼廣行(1943年~)は横笛奏者である。

 句の「蚕祭文(シラアのさいもん)」は、遠野市・遠野物語にまつわる文化財。歩き巫女とよばれたものが各地に伝えた。「おしら様」は民間信仰の養蚕の神であり、眼の神であり、女の病を祈る神であり、子どもの神などでもあるという。男女一対の桑の木の偶像で、馬頭のものもあるという。


        桑若葉 神よせの白い虫黒い馬     大井恒行



  撮影・芽夢野うのき「誰もあやめませんあしからずアヤメ」↑    

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