奥坂まや第4句集『うつろふ』(ふらんす堂)、装丁は菊地信義。『妣の国』(平成23年刊)以降、令和3年1月までの370句を収載。著者「あとがき」の中には、
『妣の国』を上梓した平成二十三年には、東日本大震災という未曽有の災厄が起こり、今またコロナという未知の疫病(えやみ)の跳梁の最中です。この十年の間、同年代の友の死も幾度か経験し、特に小学校以来の親友の逝去に対しては、心の傷が疼いてやみません。
『妣の国』は、俳句の師や先達との別れ、両親の看取りなど、私にとって死者を送る句集でした。『うつろふ』は、自ら死と向かい合う句集となったと感じています。
とあった。ともあれ、集中より、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
加藤郁乎逝く
青嵐宇宙嵐や郁乎消ゆ まや
蚰蜒のしやらしやら通り過ぎにけり
色さして世より離るるははき草
月光に兵が征くその中に父
叫び蔵してことごとく枯木なり
鶴帰る緋色の蒲団畳みあり
桜散るいつもわれらを置去りに
水無月や灯を消して部屋沈みゆく
吹かれては日の丸古ぶ雲の峰
実石榴のわわしく裂けてをりにけり
星なべて自壊のひかりきりぎりす
春風を聴いてをるかに死者の耳
春深し木馬駆くるは地に触れず
春の星この世限りの名を告ぐる
奥坂まや(おくさか・まや) 1950年、東京生まれ。
撮影・鈴木純一「うつせみと同じ軽さに蟬の秋」↑
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