高橋将夫第7句集『命と心』(文學の森)、『蜷の道』に続く第七句集で344句を収める。著者「あとがき」に、
(前略)俳句の道に入って十年、主宰を継承して二十年、通算三十年余りが過ぎた。主宰を継承してからの二十年は、「俳句は精神の風景、存在の詩」という先師の基本理念をベースに、「①簡明 ②深さと広がり ③新鮮さ、オリジナリティー、作者ならでは視点」に留意して、自分なりの表現で、自分なりの俳句曼荼羅の世界を展開してきたつもりである。(中略) 『蜷の道』の「あとがき」に「俳句の世界にもまだ未知の世界がありそうな気がする」と記したが、この三年ではたしてどれほど新しい世界を見ることができたかはなはだ心もとないものの、蜷の道のりはしかと三年分伸びた。「俳句の世界を知り尽くす」というはてしない夢を追って、森羅万象を作者ならではの発想、視点、感性で捉える句作りを続けてゆきたいと思っている。
箱庭の空に私の眼玉あり
とあった。蜷の道は、どうやら先師・岡井省二とは、また別の世界を進みつつあり、脱し、高橋将夫独自の域に入っているようである。おもあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
噴火してしまつた山の苦笑い 将夫
人間が居るゆゑ山河あたたかし
核実験するのは男ひな祭
無意識の中にもぐつてをる田螺
梅の木に接ぎ木をされて桃笑ふ
人間にあつて案山子に無き余生
知恵の輪を力で外す文化の日
美しき氷の城は入れない
消えないと氷つてしまふ冬の虹
綱引きの綱の中央耐へてをり
双六や同じ次元に過去未来
天網も春の塵まで掬へない
何一つ卒業できず卒業す
枯葉にも枯葉の命ありにけり
高橋将夫(たかはし・まさお) 1945年、福井県生まれ。
芽夢野うのき「椿の実ごつんごろんと怒りたる」↑
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